マーケターから事業を動かす側へ――「自分がやるしかない」が引き寄せた新境地
自分がやるしかない――そう腹をくくった瞬間から、伊神辰徳のキャリアは大きく動き始めました。
マーケターとして入社し、広告運用担当者として車のサブスクサービス「カーリースカルモくん」(以下、カルモ)の成長を支えてきた彼が今向き合うのは、中古車業界のDX推進。
ナイル初のM&A後のPMI(※)において、社内で前例のない挑戦が彼を待っていました。
※PMI(Post Merger Integration)…M&A成立後の企業統合プロセスのこと。
マーケターの枠を超えて事業企画の領域へと踏み出した伊神に、キャリア転換の経緯や、M&Aした中古車販売店「パティオ」でのDX推進の舞台裏について聞きました。
自動車産業DX事業部
広告・サイトグロースユニット マネージャー
伊神辰徳(いがみ たつのり)
中古レコード販売会社で執行役員を務めた後、2021年にWebマーケターとしてナイルへ入社。「カーリースカルモくん」の広告運用を経て、2025年よりM&A先である株式会社パティオのDX推進に従事。前職での実務経験を活かし、現場に即した業務の自動化・仕組み化を主導している。
目次
逆境を乗り越え視座を高めた、カルモWebマーケ時代の挑戦
——ナイルに入社する前はどんな仕事をしていたんですか?
前職は中古レコードやCDを扱う会社で、アルバイトからスタートし、最終的に執行役員になりました。
在籍した10年のうちに、組織が10人から150人弱の規模に成長。その過程で、仕入れから商品化、販売まで一貫して経験しましたね。
ECサイトへの商品登録を効率化する基幹システムの構築や、顧客購買データの収集・分析、仕入れや販売の戦略策定なども手掛けました。
——役員にまでなった会社から、転職を決意したきっかけは?
前職では大きな裁量を持って挑戦させてもらい、非常に楽しかったです。
ただ、事業企画もマーケティングも独学で学んだ部分が多かったため、より専門性の高い、プロフェッショナルな人たちと切磋琢磨できる環境に身を置きたいと考えるようになりました。
ナイルのことは、前職でSEOについて相談先を探していた頃から知っていました。
デジタルマーケティングの領域で非常にレベルの高い会社という印象でしたね。
また、ナイルがデジタルマーケティング事業から始まり、メディアやモビリティ領域など複数の事業を展開している点にも惹かれました。
マーケターとしての専門性を磨くだけでなく、将来的には事業そのものを変えていくような挑戦ができるのではないか、という期待感を持って入社を決めた感じです。
——2021年8月に入社され、最初は自動車産業DX事業部(以下、MDX)でカルモのマーケティングユニットに配属されました。
当時は主に広告運用を担当していました。
入社当初は検索広告に特化していましたが、徐々にSNS広告やディスプレイ広告など、マーケティング全般を見るようになりましたね。
ただ、広告運用がメインではありましたが、当時からプロダクトへの提案も行っていました。
例えば、中古車領域における新たな販売スキームの企画を提案し、事業戦略会議での検討やトライアルに関わったこともあります。
——当時は競合の広告投資が強まっているなど、市場環境的にも大変な時期でしたよね。
おっしゃる通り、広告の獲得効率が悪化していました。
月の広告予算も数千万円もの規模だったので、成果が出ない状況は大きなプレッシャーでしたね。
そこで、従来の「カーリースの審査申込数」といった集客視点のKPIから、審査通過後の「契約のしやすさ」に視点を変えたんです。
地道に顧客インタビューを重ねてニーズの解像度を高め、契約につながりやすい媒体に予算を集中させることで、状況を打開しました。

——改善の積み重ねが実を結んだのですね。カルモ時代で、ご自身が最も成長したと感じるエピソードはありますか?
上長が育休に入ったときです。
それまでは最終的な意思決定を完全に任されているわけではありませんでしたが、上長が不在のあいだはその役割を担うことになりました。
そこで「自分がやるしかない」と腹をくくりましたね。
ただ、成果が安定しない時期でもあったので、最終決定の重みは想像以上でした。
でも、数字が動いた理由をすべて自分の言葉で代表や経営層に説明しなければならない環境に身を置いたことで、物事を論理的に追求し、説明する能力が格段に上がったと感じています。
この経験によって、視座が一段と高まりましたね。
<参考記事>
パティオの業務に踏み込んだ先に、やりたかった仕事があった
——そして、2024年にナイルが中古車販売店のパティオをM&Aしたことを機に、パティオでの仕事にも関わり始めましたよね。
ナイルにとって初のM&Aであり、私にとっても大きな挑戦の始まりでした。
ナイルから積極的にパティオへメンバーを送り、DXのノウハウを取り入れながら、デジタル活用による業務効率化や売上拡大を目指していくことになったんです。

最初は、集客の要である「カーセンサー」や「グーネット」といった中古車情報サイトにおける集客改善をミッションに、プロジェクトに関わり始めました。
ですが、パティオの皆さんにヒアリングをする中で、広告以外の課題についても自然と会話が生まれるようになったんです。
そこで、「こういうアプローチをすれば改善できるのでは?」と一つひとつ提案をぶつけていったところ、「それいいね、やってみなよ」と任せてもらえることが増えていきました。
<参考記事>
——徐々にやることが広がっていったのですね。
はい。気づけばパティオ業務に割くリソースがどんどん大きくなり、2025年に代表の高橋から「パティオに全振りでやってみないか」と提案をもらいました。
ちょうどパティオの業務がすごく楽しいと感じ始めていた時期だったので、「ぜひやらせてください」と即答しました。
——そもそも事業企画に興味はあったのですか?
事業の企画から携わりたいという思いは、上長にもずっと伝えていました。
それがパティオという舞台で実現することになったのは、ある意味で幸運でしたね。
前職で中古レコードを扱っていた経験から、ユーザーやオークションで仕入れて商品化し、集客して販売するというビジネスモデルの共通点を感じていました。
商材や規模は違えど、前職の経験を活かせる領域だと直感したんです。
——なるほど、商材は異なるものの、考え方に親和性はあったということですね!では、現在は具体的にどのような業務をされているのでしょう?
大きく分けると、「経営方針・経営計画に基づいた事業の企画・推進」と、「仕組みの構築」の2つになります。
事業の企画・推進は、主に仕入れや販売のデータの分析と、分析結果に基づいた最適化の提案です。
顧客ニーズが高いのに在庫が薄い車の仕入れを強化したり、市場の状況に応じた販売戦略を立てたりしています。
仕組みづくりは、オークションの仕入れ自動化、実地販売におけるダイナミック・プライシング(動的価格設定)といったツール開発がメインです。
中でもダイナミック・プライシングは、市場需給データや過去の販売実績、在庫状況、季節要因などを考慮して、中古車の価格をリアルタイムで自動変動させる独自のツールになります。
これを導入したことで、パティオが培ってきた目利きの力を活かしつつ、需要が高いときは収益の最大化、低いときは販売機会の確保を図れるようになりました。

こうした大規模なツール開発だけでなく、人為的なミスや情報のブラックボックス化につながりやすいアナログ運用の改革にも取り組んでいます。
ポータルサイトへの広告掲載業務の効率化や、ホワイトボードで管理されていた車両情報や在庫情報をスプレッドシートに移行するなどして現場の方の負担を減らしつつ、販売促進につながる仕組みづくりを進めてきました。
パティオのメンバーへのリスペクトが信頼構築の土台に
——パティオでの業務は前例のないことばかりで、大変だったのではないでしょうか。
もちろん大変でしたね。
ナイルとパティオの双方から集まった背景の異なるメンバーが、一つの目標に向かって目線を合わせる必要があったので、どうすれば信頼関係を築けるか、どうすればスムーズにコミュニケーションが取れるか、という点に最も心を砕きました。
——信頼関係を築くために、どんなことを意識しましたか?
まず、パティオがこれまで培ってこられた歴史や文化を絶対に否定しないこと。
お互いのやってきたことを尊重し、リスペクトを忘れないことを常に念頭に置いていました。
その上で、伸びしろがある部分については「いっしょに考えていきましょう」というスタンスを徹底しました。
一方的に解決策を押し付けるのではなく、パティオの皆さんの意見を聞きながら、どうすればもっと良くなるかについて協議を重ねることを大切にしました。
——意見がぶつかることもありましたか?
もちろんありました。
パティオの皆さんが持つディーラーとしての長年の知見からいただく意見は、素直に受け入れることも多かったです。
一方で、私としてはデータを見ても論理的に考えても、「ここは絶対に改善したほうがいい」という譲れないポイントもありました。
そうした場面では、数字的な根拠をきちんと示して、なぜそうすべきなのかを理解してもらえるまで、丁寧にコミュニケーションを続けましたね。
——その努力が実を結び、今では関係性も大きく変わったそうですね。
最初の頃はパティオの皆さんの表情も硬く、緊張されている様子でしたが、何度もお店に足を運び、懇親会などで交流を重ねるうちに、だんだんとお互いの警戒心が解けていったのかなと思います。
今ではお店に行くと「おつかれ!」と気さくに声をかけてくれますし、「プライベートで飲みに行こうよ」と誘ってもらえるまでになりました。本当にうれしかったですね。

パティオの成功事例を武器に、産業をまたいだDX化の推進役に
——DX推進プロジェクトを進めてこられましたが、特に大きな成果につながったものは何ですか?
広告掲載業務の自動化ですね。
その一環として、車両の装備情報などをチェックするためのアプリや、撮影ガイド付きの車両撮影アプリを開発しました。
これまでは紙で管理していた情報をデータ化することで、RPAによる広告媒体への自動掲載が可能になります。
この仕組みが完成すれば、従来の10分の1の作業量にまで削減できる見込みです。
——それは大きなインパクトですね!この1年半の取り組みを振り返って、一番うれしかったことは?
やはり、2025年度が締まったときに、売上・利益ともに業績が大きく伸びたという事実そのものです。
やってきたことがきちんと成果として形になったことは、とてもうれしかったですね。
また、パティオの皆さんから業務について相談いただいたり、協力を求めていただく機会が増えたことも印象に残っています。
少しずつ信頼していただけるようになったのだと感じました。

——今後の展望についても教えてください。
まずは、現在開発中の仕組みを完成させ、パティオの事業をさらに成長させることが最優先です。
パティオを中古車業界のトップランナーのような存在にしたい、という思いがあります。
その成功モデルを、次のM&Aなどを通じて横展開していく――それが結果的にナイルが掲げる中古車業界全体のDX化につながると信じています。
将来的には、この経験を活かして、さまざまな業界における業務改善やDX推進にも関わっていきたいですね。
——伊神さんはナイルでキャリアを広げましたね。
そう思います。広告運用というひとつのキャリアに閉じず、事業企画やアプリ開発、プロジェクトマネジメントまで、本当にさまざまなことを経験させてもらっていますね。
ナイルは自分の「挑戦してみたい」という気持ちを歓迎し、実現まで支えてくれる会社なので、型にとらわれず変化を楽しみたい人には良い環境だと思います。
パティオのPMIもそうですが、既存のやり方だけではどうにもならない課題に直面する場面は多々あります。
そうした状況を楽しみながら、さまざまな技術や知識を応用して解決策を考えることがやりがいにつながっています。
<採用情報>
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