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「AI活用を推進しない状態」を目指して──息を吐くようにAIを使う組織づくりに必要なこと

ナイルでは、ChatGPTが一般で使われるようになった2023年初頭から、生成AIを業務に取り入れようと全社的に動いてきました。

そこから3年。DX&マーケティング事業部(以下、DXM)では、Webコンサルタントが息を吐くようにClaude Codeを使い、コンテンツ制作チームのワークフローにはAIが当たり前に組み込まれる──そんな光景が広がっています。

この変化を事業部内で仕掛けているのが、AI/DX推進やオンボーディング研修をはじめ、DXM事業が売上げを向上しやすくなる・働きやすくなる・育成しやすくなるといった「〇〇しやすくなる」仕組みを作る、ビジネスイネーブルメントユニット(以下、BEユニット)の石原翔太郎と中島彰一です。

彼らが、DXMに生成AIを浸透させるために行ってきた具体的な取り組みについて話を聞きました。

DX&マーケティング事業部 ビジネスイネーブルメントユニット

石原翔太郎(いしはら しょうたろう)
マネージャー 
DXMのWebコンサルタントを経て、2023年3月に生成AI事業を立ち上げ。2025年1月からDXMにおける組織開発・AI/DX推進の役割を担い、同年7月に発足したビジネスイネーブルメントユニットのマネージャーに就任。事業部の売上が伸びやすくなる仕組みづくりを担う。

中島彰一(なかじま しょういち)
DXMのコンサルタントサポートを経て、現ユニットに合流。非エンジニアでありながらGAS(Google Apps Script)やマクロ、Claude Codeを駆使してツール開発を担当。“コードがわからなくても書ける”AI時代の到来と共に開発にのめり込み、現在はエンジニアに近い技術力で事業部を支える。

「プロンプト」の意味もわからなかった、生成AI黎明期からの道のり

──石原さんはナイルが生成AI活用をスタートしてすぐに、DXMの生成AIコンサルティング事業の担当者になりましたよね。

石原はい、2023年3月から携わっています。ChatGPTが一般公開されたのが2022年11月30日で、その3ヵ月後くらいでしたね。

その当時、自分も生成AIについてよくわかってなかったので、とりあえず「プロンプト」って何だろうと思って検索したら、「コマンドプロンプト」のほうばかり出てきて…生成AIのプロンプトの情報は一切出てこないような早い段階だったんです。

石原翔太郎

──それまではDXMのWebコンサルタントとして活躍されていたので、いわゆるジョブチェンジみたいな感じですよね。当時はどう感じていたんですか?

石原私は「今一番おもしろそうなこと、チャレンジしがいのあることをやりたい」というのがキャリアの軸なので、特に抵抗はなかったです。

今も、「事業が成長する仕組みづくりをする」という仕事におもしろさを感じているのでやっていますし、そのために最も最適な手段が今はAI・DX推進だと考えているので取り組んでいます。

<石原のWebコンサルタント時代のインタビュー記事>

People

Web業界未経験で飛び込んだコンサルタントの道。タフな選択肢を選んだ理由は?

──現在のBEユニットが正式に発足したのが2025年7月。そのタイミングで中島さんがジョインし、2人ユニットになりました。

石原私個人は2025年1月からすでに役割を持っていて、中島さんは当時サポートコンサルタントとして、アルバイトを活用して生産性を上げるプロジェクトを動かしていました。

私はAIを活用する方向で動いていたので、結局「アルバイトを雇うよりAIを使って生産性を上げたほうが良いのでは?」という話になり、がっちゃんこした感じです。

──中島さんは、サポートコンサルタント時代もAIは使っていたんですか?

中島いえ、ほとんど使っていないというのが正直なところですね。なので、私はBEユニットになってからAIを使った開発に着手しました。

<中島のサポートコンサルタント時代のインタビュー記事>

People

サポートの形は自分次第!“得意”を活かしてWebコンサルタントを支えるコンサルサポートの仕事

──具体的に、どのような開発を行っていたのでしょうか。

中島コンサルタントサポートは定型業務が多いので、そこから手を付けました。

GAS(Google Apps Script)やマクロを使ってツールを開発し、コンサルタントサポートの業務を自動化・簡略化していく…というのをやっていたら、どんどん開発にのめり込んでいって。

競合調査ツールや、効果測定のためのデータを出すツールなど、それまではWebコンサルタントがアシスタントに依頼して、出来上がるまで数営業日かかっていた作業を、アシスタントに依頼せずともすぐやってくれるツールを主に作っていました。

──結構楽しんでやられていたんですね!

中島そうですね。というのも、私はAIというより開発に興味があったんです。

実は昔、エンジニアになりたいと思ったことがあって。それでエンジニアのスクールに行ってみたものの、英語もわからないし、コードに何が書いてあるかもわからず、1ヵ月で心が折れてしまって…結局あきらめちゃったんですが。

でも、AIが登場したことで、コードがまったくわからない私のような非エンジニアでも、GASが書けるようになった──そこにすごく感動がありましたね。

中島彰一

生成AIを使いこなせる状態になっていないことのリスクは確実にある

──ナイルは全社的に生成AI活用を進めていますが、中でもDXMがここまでAI活用に力を入れているのはなぜなのでしょう。

石原DXMは、Webコンサルタントや編集者の生産性を上げることが売上げの向上に直結する事業部なんです。

つまり、DXM事業を成長させる手段として、いま最も効果的なのがAIを活用することだという判断がありました。

──なるほど、そういった投資判断があったわけですね。では、お2人がこれまで、具体的にどんな取り組みをされてきたのか教えてください。

中島僕の場合は、ツールを開発するところから始まったので、「非エンジニアでも、GASを使ってツール作れるよ、業務を効率化できるよ」とSlackなどで発信して、「中島ができるんだったら誰でもできるんじゃね?」って空気を事業部内に作るようにしていました。

その取り組みもあってか、メンバーみずからGASを使う人が増えてきたので、そこはひとつの成果かなと思っています。

石原私は、メンバーに向けた「生成AIワークショップ」から始めました。当時はGPTs(ChatGPTのカスタムGPT機能)の作り方をレクチャーしたりとか…つい最近の話なのに、妙に時代を感じますね(笑)。

中島さんと合流してからは、DXMの業務の中に「こういうことをAIでなんとかできたら助かるよね」みたいな小さなアプリケーションを作るのが多かったかなと。

DXMでのAI活用は、Webコンサルタントとコンテンツ編集者でアプローチを変えています。

Webコンサルタントは、手を動かす業務の多くはサポートコンサルタントが行い、自身は戦略策定や施策の優先度づけなどの“思考”がメインの業務となるので、作業をAIが代替して生産性を上げることが難しいんです。

なので、AIでツールを開発して使ってもらうよりは、思考する際の“壁打ち相手”としてAIを活用して、提案内容の質を上げることのほうが大切だと思いました。

そこで、各WebコンサルタントのAI活用力を高める支援をしています。

一方で、コンテンツ編集者の場合は、案件によってやることは多少変わるとはいえ、大きくコンテンツ制作の流れは変わらないので、その中での生産効率の向上を目指したAI活用に着手しました。

編集者やコンテンツチームのマネージャーと話し合いながら、ツールを作るというよりは、メンバーが記事制作で使えるワークフローを作っています。

──今は、DXMのメンバーから希望者を募って、徹底的にClaude Codeの活用方法をインストールする「Claude Codeブートキャンプ」を行っていますよね。

石原AIでDXを推進していくためのアプローチは大きく2つあって、ひとつは「ツールにする」こと。

事前に定義されたことを入力すれば誰でも同じぐらいの品質のアウトプットが出るツールにしてしまう。これは中島さんがやってくれていることです。

もうひとつが、「人がAIを使いこなす力を上げていく」こと。これは、属人的な業務も個々で効率化できるようになることを意味します。

属人化って、言葉で言うほど簡単な話じゃなくて、いろんな理由が入り混じって結局そうなっているので、これをツールによって万人向けに平準化しようとしても、基本うまくいきません。

だったら、一人ひとりがAIを使いこなせる状態になって、自分の仕事を自分に合った形で効率化させる状態を作ろうと。
そのためには、今の段階だとClaude Codeを使いこなせるようになるのが一番いいということで、ブートキャンプという形で、集中的に学んでもらうことになりました。

──私もClaude Codeを使うようになって、だいぶ楽になってきている気がします。

石原メンバーそれぞれが、私と中島さん並みにClaude Codeを使えるようになったら、ツールを何個も作るよりもはるかに事業部内の生産性が底上げされるはずです。

Claude Codeは、マーケティングや非エンジニアにかなり使われているツールになっています。
そんな状況なのに、うちのメンバーがClaude Codeを使うことなく進んだとしたら、クライアントから「ナイルさんって、この分析に3日もかかるんですか?」みたいなことを言われる可能性もありますよね。

なので、少なくともナイルのWebコンサルタントは、Claude Codeを“息を吐くように”使えるようになっていないといけないと感じています。

──「Claude Codeブートキャンプ」には、想定を上回る参加希望者が集まったそうですね。

石原当初は30人ぐらい集まればいいかなと思っていたのですが、結局60人ぐらい希望者がいて、めちゃくちゃ焦りました(笑)。

1クラス5~6人で、全部で11クラス作り、全3回ワークショップを実施します。

──講師は石原さんと中島さんしかいないことを考えると、2人のカレンダーがとんでもないことになりますね…。

石原11クラスで全3回なので、2人で計33回行うことになりますね…。でもこれだけの人数が集まってくれたので、我々も逃げずに最後までやらないとと思っています。

「特に困っていない人」をどう動かすか──AI推進の難しさ

──AI活用を推進していく中で、難しさを感じることはありますか。

中島「AIで何ができるの?」とよく聞かれるのですが、これって、電卓しか使ったことがない人から「Excelって何に使えるの?」と言われているのと同じなんですよね。

実際、電卓しか使ってこなかった人がExcelを使うようになったら、確実に世界が変わるし、感動するじゃないですか。

でも、電卓を使うことが普通で、それに対して不満がなければ、Excelを使おうと思わないんですよ。

それと同じで、AIに感動するにはまず使ってもらわないといけない、でも人間は新しいものを取り入れるのに勇気がいると思っていて。その壁をどう壊していくかが難しいなと思っています。

石原私も同じで、特に困っていない人」にどう対処するかですね。

自分が今までAIを使わずに仕事ができているのに、なぜわざわざAIをインプットする必要があるのか──現場は生産性が2倍になっても報酬が2倍になるわけではないし、今の仕事の仕方で困っていない、AIを使う必要がないと思っている人にとっては、緊急度が上がらないんですよ。

なので、中島さん主導でさまざまな便利ツールを開発してメンバーに提供することで、AI活用に協力してもらうための“徳”を積んでいた…という背景があります。

中島これは石原さんに言われたことなんですけど、「相手の業務をちゃんと理解しよう」ということですね。

相手が実際にどんな仕事をしているのか、それに対してAIでどんなアプローチができるのかを考えて伝えるようになりました。

そうじゃないと、自分の仕事をまったく知らない人から「AI使うといいよ」と言われても動かないじゃないですか。

石原私は、“中島さんがAI推進をする”ことに大きな意味があると思っています。

DXMのメンバー、特にWebコンサルタントにとって中島さんは“いっしょに仕事をしてきた仲間”で、コンサルタントの業務を深く理解している人です。

だからこそ、外部の企業や別の事業部のエンジニアではなく、中島さんが作ったAIツールならきっと“使える”はずだと、DXMのメンバーは思うんです。推進力が全然違うんですよね。

──確かに、自分の業務を知ってる人が“使える”と言うなら…という気持ちになります。

石原あと、事業部内の会話で使う言葉を少しずつ調整していったりもしています。

例えば、今後は「Skills(※1)を使ったらこういうことができるじゃないですか」「カスタムエージェント(※2)を作ってこうやってみたらどうですか」みたいな会話が普通に行われる状態になっていくと思うんですけど、そういう状況になると、言葉の意味がわからない人は焦ると思うんですよね。

※1 Skills(スキルズ)…Claude Code(およびclaude.ai)に読み込ませる「専門手順書」のこと。よく使う作業のやり方をあらかじめ登録しておくと、Claude Codeが適切なタイミングで自動的に参照して実行してくれる。

※2 カスタムエージェント(custom subagents)とは、Claude Codeに作成できる「専門担当AI」のこと。特定の作業に特化した指示や権限をあらかじめ設定しておくことで、その役割に応じたタスクを自律的にこなしてくれる。

同じチームの人たちがそういう会話をしているのに、自分はできない、知らないという状態は、「自分もやらなきゃ」って原動力になるので。

「Claude Codeブートキャンプ」も「このようにレクチャーするのは最初で最後」といった言葉を“演出”として使っているんです。

ことさら煽り立てるつもりはないんですけど、AI活用は“努力目標”ではなく、“必須スキル”として求められているんだというのをしっかり伝えるために、あえて強い言葉を選んでいます。

──先日は新卒向けのAI研修も行っていましたよね?

石原はい、実はそれもメンバーへAI活用を推進する“仕掛け”として考えていたんです。

「新卒メンバーが12時間の研修で、Claude Codeを使ってこんなアプリケーション作りました」と発表すると、既存社員たちは「え、こんなの新卒が作れるわけ?」と思いますよね。

こういうことを普通にできる新卒が入ってきて、「これがこれからスタンダードになります」と下からプレッシャーをかける意味で、今年は新卒研修をかなり手厚くやりました。

新卒メンバーがClaude Codeを駆使して作った、ルーレットでランチのお店をレコメンドしてくれるWebアプリ
石原がSlackで公開した新卒AI研修の内容

AI活用推進のゴールは「AI活用を推進しない状態」

──今お2人が行っている取り組みのゴール、DXMのメンバーがどういう姿になっているのが理想なんですか?

石原私たちが「AI活用を推進しない状態」になっているのが理想です。

DXMのメンバー全員のAIリテラシーが私や中島さんと同じ状態になって、こちらから「こういう使い方をすればいいんですよ」とか「こういう便利なツールが出ましたよ」と毎度言わなくても、みんなが自主的にAIを駆使して業務の生産性を上げたり、新しい価値を創出できたりする状態になっていることですね。

そうしてみんなが自走する中で、私たちがAI活用の環境づくりやノウハウ提供でサポートする側に回れるといいなと思います。

──DXMではもうAIを使うことが当たり前になりつつあって、個々の仕事の仕方が大きく変化していると感じます。

石原現在(2026年6月時点)、DXM内のClaude Code稼働率はデイリーで70%を超えているんです。

こんなテック系のツールを非エンジニアしかいない事業部のメンバーが使ってるなんて、すごいことだと思います。

ベストプラクティスが2~3ヵ月で変わってしまうAIの世界ですが、そういった変化を楽しめる人には最適な職場じゃないでしょうか。

事業部の内側から変化を仕掛けてみたい人にとっては、今のナイルのDXMは本当におもしろいタイミングだと思います。

中島僕自身、コードが1行もわからない人間ですが、今やAIを使って事業部のツール開発を担っています。

だからこそ、「AIに興味はあるけど、技術的なバックグラウンドがないから不安」という人が活躍できる余地はめちゃくちゃありますよね。

今のナイルはAI活用の最初の一歩を踏み出す環境として、本当に恵まれた場所だなと思っています。

──お2人が次の展開として考えていることはあるんですか?

中島「Skills Shop」というものを作ろうと、作業を進めています。

Claude Codeで動くSkillsは、要はマニュアル兼実行スクリプトのようなもので、それをひとつのポータルサイトに集約して全社に展開して、誰でもダウンロードして使えるシステムになる予定です!

石原AIによる業務効率化の恩恵は、他社も着手しやすいものなので競争優位性になりづらく、価値が目減りしやすいものですよね。

一方で、これまで“AIがなかったらできなかった”仕事やサービス、組織などを設計して、非連続的な事業成長を実現する競争力を獲得していくことはとても重要だと考えています。

そのため、ナイルのノウハウや実績とAIを掛け合わせた、ナイルにしか提供できないサービスの実現を目指して準備を進めているので、期待していてください!

ナイルでAIを活用しながら一緒に働きませんか?

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