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これからのSEOマーケターが成果を出すために必要なこと――JADE伊東氏×ナイル土居

トレンドの移り変わりが激しいデジタルマーケティング業界。SEOにおいては、Googleのアルゴリズム進化によってかつては通用していたテクニカルな施策が効きづらくなり、やみくもにコンテンツを作るだけでは成果が出なくなっています。
一方で、デジタル広告においては、Cookie規制強化によってWebサイト閲覧者の行動をトラッキングした広告施策が難しくなっていくでしょう。

このように業界が大きく変化する中、SEOを担当するWebマーケターが変化に対応しながら継続的に成果を出すためには、どのような視点とスキルセットが求められるのでしょうか。

ここでは、ぐるなびでSEOを中心としたWebマーケティング組織の責任者を経て、現在はWebコンサルティングを行う株式会社JADEの代表を務める伊東周晃氏と、ナイル株式会社のSEOサービス責任者・Webサービス責任者を経て、同社の人事トップを務める土居健太郎に話を聞きました。

伊東 周晃(いとう のりあき)
株式会社JADE 代表取締役
2000年に株式会社NKB入社。2004年より東京メトロと共同運営する地域情報サイトの立ち上げ、運営に参加。2007年より株式会社ぐるなび。同社では、SEO、ソーシャルメディア施策、Web解析、コンテンツマーケティング、広告、広報領域の執行役員を務めた。株式会社JADEでは、「Growth & Integrity」をコンセプトに検索を軸としたWebコンサルティングサービスを提供している。


土居 健太郎(どい けんたろう)
ナイル株式会社 取締役 人事本部 本部長
2008年に東京大学工学部中退後、フリーターとして活躍。2009年、成り行きでナイル株式会社に入社。2010年より事業部長としてデジタルマーケティング事業の立ち上げを牽引。2015年、同社取締役に就任。2016年からはメディア事業部に異動、自社サービス「Appliv」サービス責任者を経て、同事業における新規サービスの立ち上げを担当。2021年1月に人事本部 本部長に就任、現在は人事責任者として主に採用と組織開発を担当。著書に「10年つかえるSEOの基本」(技術評論社)がある。

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SEOで成果を出すには決裁権を取りに行くべし

――事業会社でSEOに取り組むとしたら、最初に何をやるべきだと思いますか。

伊東:事業会社におけるWebサービスというのは、あくまでもビジネスを行っていく上でのひとつの手段で、SEOはさらにその中のWeb集客施策のひとつに過ぎません。SEOで成果を出すためには、社内におけるSEOの優先度を上げていくことが大事です。

特に、経営者や事業責任者がWebに明るい人でない場合は、比較的容易に達成できるレベルの成果を積み重ねて、少しずつ社内における発言権やSEOの予算を取れるようにしていくといいと思います。
「SEOって大事なんだ」と経営者や事業責任者に理解してもらいつつ、自分の権限の範囲を拡大していくイメージですね。

JADE 伊東周晃氏

土居:SEOを主導する人に決裁権がないままではうまくいかないですよね。
SEOはGoogleのアルゴリズムによって検索キーワードの順位が上下変動を繰り返すので、しくみを知らず、結果だけ見て判断する上司に順位変動の理由を毎回説明して理解を得るのは、正直言って面倒くさい。
伊東さんの言う通り、基本的には自分が決裁権を持ち、チームを作って取り組むのが手っ取り早いと思います。

――SEOに理解がある人が決裁権をもっている環境を作るということですね。

伊東:そうですね。SEOで成果を出すポイントは、まず自分が決裁権をもって動きやすい環境を作り、小さな成果を積み重ねながら、徐々にSEOの予算を増やしていくこと。そして、SEO以外のデジタルマーケティング領域に裁量を広げていくことです。

――SEO以外の領域にも広げていくことが重要なんですか。

伊東:そうですね。逆説的ですが、一見SEOに関係なさそうに思えることがランキングに影響を与えることがある、というのが今日の状況だと考えています。例えば、いわゆる「ブランド力」的といった話ですね。

企業活動の中にはSEOのためと思ってやったわけではないけど、SEOにポジティブフィードバックされ得るものがあるということを考えると、総合格闘技的取り組みに近い。いつまでも狭義のSEOに拘泥していると早々に成長限界がきます。

SEOを起点に、例えばデジタル広告や広報といった領域も自分のものにしておくと、より広い見地からマーケティングを考え、意見を言えるようになるでしょう。

自分が決裁権を持つのが難しければ、ブランディングや広告などの分野を担当している人たちとリレーションを築いていく必要があります。

土居:組織では、幅広く内部をわかっている人が一番うまくやれますよね。ことSEOにおいては、UI/UX、コンテンツ、技術実装などのWebサービス運営に関わる幅広い領域が関わってくるので、UI/UXについてデザイナーと話す、エンジニアと技術的なことについて話す、といったように柔軟な立ち回りで協力関係を築きつつ、大局的な見地で柔軟にマーケティングを考えられるだけの知識があることが望ましいです。

チームビルディングとマネジメントができるマーケターの価値は高まっていく

ナイル 土居健太郎

――SEOを知っているだけでは成果を出すのが難しくなっているんですね。マーケターとして成果を出し続けるにはどういったことが求められるのでしょうか。

土居:昔のSEOは、キーワードをタグに入れる、サイトの内部設計をする、外部リンクを調達するといったテクニカルな部分が重視されていて、しかもそれで成果が出せていましたが、今ではそういう施策にほとんど価値はありません。

SEOが「一部の人だけが知っている裏技的なもの」という時代はとうの昔に終わっていて、今はそれぞれの職種、職域の中にSEOが溶けている感覚。Webサイトをつくるエンジニアやデザイナー、コンテンツをつくる編集者やライターも一生懸命SEOを考えているわけですよ。

伊東:一部の専門的な部分だけをSEOの専門家がやって、あとはそれぞれの職域の中でSEOに取り組んでいる感じですよね。SEOだけを知っているマーケターのアドバンテージは失われつつありますが、組織のDNAとしてSEOが埋め込まれていく、そうしたSEOの在り方は非常に理想的な気がします。

土居:マーケターは、そうした中で成果を出していくために、SEOにプラスして何をどう伸ばしていくかを考えなくてはなりません。Googleのアルゴリズムも進化している中で、「検索キーワード職人」みたいな感じだけだといずれ食べていけなくなってしまうでしょう。

伊東:SEOに関わるとサイト運営の全般的な能力が鍛えられて、UI/UXやコンテンツマーケティング、CRO(コンバージョンレートオプティマイゼーション)に関する領域は素養として自然と入ってきます。横に広くスキルを伸ばしつつ、自分の強みを縦に深堀していけるといいですね。

土居:SEOのスキルを卑下する必要はないけど、それだけに固執していると研究者みたいになっちゃう。といっても、多くの人が踏み込まない領域までその専門性を追求していくのであれば話は別で、レアリティの高い職能として重宝されます。

つまり、成果を出すマーケターになりたいなら、

スペシャリストとしてレアリティのある人になる
・武器として複数の得意分野を持ったマルチなデジタルマーケターになる
・出世して自分の裁量で意思決定できる立場になる

この3つのいずれか1つ以上を満たすことを目指すべきです。

伊東:土居さんと自分の経験からSEOを例に話してきましたが、これはデジタル広告においても同じことがいえますね。Google広告ひとつとっても、AIベースになっていくなかで、運用者がバリューを出すべきところが変化してきている。

SEOもデジタル広告も、これまでの手法だけで戦っていると、この先マーケターとして成果を出し続けるのは厳しくなっていくはずです。

――そのほかにマーケターが成果を出す上で求められるスキルはありますか。

土居:それでいうと、チームビルディングとマネジメントができる人は強いですよ。
SEOが溶けているというお話をした通り、マーケターだけで完結するのではなく、デザイナーやエンジニア、編集者などの別職種の人を巻き込んで、マネジメントしながらプロジェクトを進めていく必要があります。

自分一人で成果を出せる人よりも、成果を出すためのチームを作り、マネジメントできるマーケターの価値は今後もっと高まっていくでしょう。

「事業会社は自由にやれそう」は幻想!?

――事業会社か、支援会社(エージェンシー)か、転職の際に悩む人が多いと聞きます。事業会社は自由度が高くて自分のやりたいようにできそう、というイメージも強いようですが、実際はどうでしょう。

伊東:結論的には、支援会社も事業会社もそれぞれ違う良さがあって、どちらを選んでも成長できるとは思います。
でも、事業会社のほうが自由そう、というのは幻想(笑)。支援側での関わり方が中途半端だったり、提案が通らなかったりすると、見えない向こう側にドラマがありそうに見えるんですよ。
ただ、事業者側で自由に仕事をしようと思ったら、社内で絶大な信頼を得てからでないと難しい。なぜなら、マーケティングの投資がお客様への価値提供に、そして自社の業績に直結するからです

まずもって、転職したてで信頼がない人に、いきなり予算を渡して大きな仕事を任せることはないでしょう。

土居:転職先の組織規模が小さくて、“一人マーケター”として予算と裁量を持ってやれるチャレンジングな環境なら話は違うかもしれませんね。
とはいえ、予算が割り当てられている以上、成果が出せなければ存在価値が問われます。思うままにやって結果がついてこなければ、「何しに来たんだよ」といわれても仕方ない。
事業会社でやっていきたいなら、自分の人件費が固定費として発生している理由まで考えて転職すべきでしょう。

総合力を養いたい場合にどちらかを選ぶとしたら、案件の幅が広く、さまざまなビジネスでマーケティングにふれられる支援会社がおすすめですね。柔軟な思考や現場で戦うスキルが身に付きやすいし、濃いフィードバックをもらえる機会も多いので。

伊東:勉強して知識を仕入れ、実践して、フィードバックしてもらって、それを高頻度で繰り返すことが成長に直結するのは確かなので、そういう観点では、クライアントワークを通じて多くのケーススタディにふれられる支援側のほうがスキルをつけやすいと思いますね。

事業会社だと社内にマーケターが少なかったり、ノウハウがない場合は有益なフィードバックを得られなかったりすることもある。フィードバック機会があるなら、事業会社側でも成長できるとは思いますが。

伊東:…ちなみに、話は変わりますが、ナイルさんではコンサルタントの教育ってどうされてるんですか?この機会にきいておきたいです(笑)。

土居:今のナイルだと、入社後に研修プログラムがあります。「自分で勉強してね」としていた頃よりは体制が整っていると思うけど、ただそれはあくまでも「基礎のインストール」なんですよね。教科書を何度か読んだだけで受験をクリアできるかというと、そうじゃないのと同じで。

伊東:研修プログラムがあるにしても、実戦の中でフィードバックしてもらう機会は絶対に必要ですね。

土居:そうですね。ある中途社員が、「なんで研修で教わった通りにやるんだ」って怒られたといっていたんですが、結局そういうことなんですよね。実務をやってみなければわからないことも多いから、ひたすら場数を踏まないといけない。

なので、事業会社か支援会社のどちらがいいかというよりは、場数が踏めて、質のいいフィードバックが得られて、本人がそれをきちんと受け止めて学習できる環境かどうかを見たほうがいいですね。

――そもそも事業会社と支援会社の両方をもっている会社も増えていますよね。

伊東:元々は支援業だった会社の中でも、自社でサービスを立ち上げてユーザーを抱える会社も増えています。それこそ、ナイルさんも「Appliv」や「おトクにマイカー 定額カルモくん」といった自社の事業を伸ばしていますよね。

支援会社がプロダクトカンパニーになっているということは、自分たちが持っているSEOなどのデジタルマーケティングスキルを事業の創出に役立てているということなんですよ。

土居:そうですね。コンサルティングを通じて多くの企業のサービスをグロースさせてきた経験や、そこで得たノウハウが、今の事業創出に活きていますね。

伊東:正しくSEOをやっている会社は、サービスを伸ばしていくために必要な条件を知っている。だからこそ、単なる支援会社に留まらない成長ができるんだと思います。事業会社と支援会社が融合していくような方向性がある会社はおもしろい、そういう変化に注目して企業を見てみるのもいいかもしれません。

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※本記事は2021年10月18日に公開しており、記載情報は現在と異なる場合がございます。