1on1の質を追求してメンバーのパフォーマンスをUP!1on1改善プロジェクトの中身とは?
メディアテクノロジー(MT)事業本部では、メンバー個々の、そして組織全体のパフォーマンス向上を目的として、2020年4月から、マネージャーがメンバーと業務の進行や課題について個人面談を行う「1on1」の質の改善に取り組んでいます。リモートワークが始まったタイミングも重なり、オンラインでのマネジメントを念頭に置いた改善施策を重ねているところ。
そこで、なぜいま事業部内で1on1を改善することになったのか、どのようなプロセスで変えようとしているのか、それによってどう個々のパフォーマンス向上につなげていこうとしているのかについて、MT事業本部PMOの小森谷有紀に紹介してもらいました。
小森谷 有紀(こもりや ゆき)
ナイル株式会社
メディアテクノロジー事業本部 PMO
2000年代前半に外資系ポータルサイトの速報サービスのエディターを担当したのち、大手通信キャリアのグループ会社にてモバイルメディア黎明期の立ち上げから拡大フェーズを経験。2019年にナイルに入社。メディアテクノロジー事業本部では、さまざまな部門横断施策を推進。
<小森谷が登場した記事>
縦の「1on1」と横の「コミュニティ」で編む組織、軸となるのは共通言語としての「事業戦略シート」
目次
属人的な1on1を効果的に活用するためには
私が2019年にナイルに入社してMT事業本部の所属になり、プロジェクトマネジメントの標準化や組織開発・人材開発を担う中で、本部CEOの高階から課題として伝えられていたのが1on1でした。
MT事業本部は「全員企画、全員自走(※)」を掲げて、職能別ではなくプロジェクトごとの組織体制を導入しています。その組織下で以前から2週間に1度は1on1を行うルールがありましたが、OKRやスクラムなどの他の施策との関係性が定義されておらず、目的が曖昧かつ属人的、マネージャー個人の力量やコミュニケーション力によって内容にばらつきがありました。最低限のガイドラインはありつつも、現状を把握できるような仕組みはなかったので、実務に追われて実施できないケースも少なくなかったようです。
※全員企画・全員自走…職種に関係なく戦略に基づくアクションの立案・協議を行う「全員企画」と、自分の役割と責任に基づき課題提議や継続改善を行う「全員自走」を求めるMT事業本部の運営方針。
そうして改善に取り組む必要性を感じはじめていた2020年4月、MT事業本部の新たな注力課題が「マネジメントスキルの向上」に決定。ちょうどコロナ禍でオンラインでのコミュニケーションが増え、マネジメントが難しくなったこともあって、1on1の質の向上に取り組むことにしました。
では、具体的にどのようなプロセスで取り組んだのかについて、順を追って紹介しましょう。
1 1on1での課題を洗い出す
最初に、これまでの1on1に関する取り組み内容を整理するため、メンバー、マネージャー、それぞれにアンケート調査を実施しました。
そこでメンバーからもマネージャーからも多く上がったのが、1on1で「何を」「どのように」話せばいいかわからないという声です。
■MT事業本部内で行った、1on1品質向上に向けたアンケート(一部抜粋)
この段階で、2つの課題が浮き彫りになりました。
・マネージャーとメンバーで、1on1の目的が共有できていない
・1on1を実施してはいるものの、機能しているかどうか可視化できていない
課題を解決するには現場の意見とマネージャーの意見、両方を取り込んで考える必要があると思ったので、10%ルール(※)を使ってプロジェクトに参加してくれる人を募りました。
それに2名の立候補があり、私と私の上司が加わった4名で、2020年の4月にプロジェクトがスタートしたのです。
※10%ルール…自身の業務時間の10%を、在籍する組織やプロダクトの担当業務以外の仕事に使うことができる制度。
2 「何を話していいかわからない」を解消する
5月にはコンサルティング会社が入り、前述した課題感と今回のプロジェクトの目的、OKRとの組み合わせ方などを話し合い、それに合わせて研修を設計しました。
大前提として、今回のプロジェクトの最終的な目標はパフォーマンスの向上です。そこで、まずは「パフォーマンスとは何か」を分解して考えました。
パフォーマンスには、2つの観点があります。
・現状の能力の「発揮度」
・現状からどこまでできる領域を増やせるか(「ポテンシャル」)
「発揮度」と「ポテンシャル」、この2つの要素を向上させることで、個人および組織のパフォーマンスがアップすると考えられます。
出典:株式会社キャリアデザインコンサルティング
これを4月のアンケート調査で出た「何をどう話していいかわからない」という課題にあてはめると、次のような解決方法を見出すことができました。
<メンバーの成績や仕事への取り組み方が順調な場合>
メンバーの仕事ぶりに問題がない場合は、昇格や仕事内容のレベルアップなど、ポテンシャルアップにつながる話をする。
<メンバーの成績や仕事への取り組み方が順調でない場合>
メンバーの状態が低迷していている場合は、その人が能力を発揮するための障壁は何かを考え、課題を整理する。
この2パターンをマネージャーとメンバーが共有しておけば、何を話せばいいかわからないという問題は解決するでしょう。
3 1on1ケーススタディ&フォーマットの導入で集合知を蓄積
6月に実施した研修では、1on1で話し合う内容について共通認識を作った後、マネージャー向けに1on1ケーススタディを実施。
・メンバーに聞くこと&聞き方
・前向きな気持ちにするフィードバックや提案
・(1on1を含めて)サポートできそうなこと
といったことを話し合いました。
その振り返りで挙がったのは、次のような意見です。
「マネージャー同士で初めて1on1について話し合うことができ、学びが多かった」
「今回は一般的な事例だったので、自社内でよくある事例でケーススタディをしたい」
そこで、翌月は本部内で発生しがちな状況をピックアップし、架空のメンバーとの1on1を想定したケーススタディを実施。部下や上司の状況設定資料をもとに、アプローチの仕方や1on1のゴール(メンバーの理想の状態)等について、3人ずつのグループでディスカッションと発表をしました。
リアリティのある事例だったので、1回目よりさらに活発な議論が交わされた印象です。業務上の課題にフォーカスする人もいれば、メンタルにフォーカスする人もいて、1つの事例でもさまざまな視点があること、経験によっても見方が違うことなどがわかりました。
■架空のメンバーとの1on1を想定したケーススタディのワークシート
また、これと同時期に、1on1後の発揮度やポテンシャルの変化をモニタリングすることのできるフォーマットをテスト導入しています。
上のフォーマットには、メンバーの「発揮度」「ポテンシャル」を記入する欄があります。例えば、「発揮度」が70から50に落ちている、「ポテンシャル」がずっと横這い(→)だったのに急にアップ(⤴︎)している、といったことがあれば、1on1での声掛けや掘り下げがしやすくなります。
最近では、リモートワークで顔が見えない時間が増えた部下の状況把握にも役立っているようです。
ちなみに、フォーマットは複数あり、キャリアについて話したいときには評価のランクごとに自己評価と課題感を整理できるフォーマットを使うなど、メンバー個々の状況やチームの方針に応じて使い分けられるようになっています。
これらのフォーマットを使うことによって、マネージャー陣からは
「メンバーへの理解と、コミュニケーションの幅が広がった」
「課題解決に向けた相談がしやすくなった」
「ランクを上げるために取り組むことが確認できて良かった」
といった声があがりました。
もちろん、事前準備をしないスタイルのマネージャーもいるので、使用は強制ではありません。1on1の正解は見えにくいものなので、フォーマットのアレンジを含め、さまざまなやり方を集めて集合知にしていきたいと思っています。
4 1on1を360°フィードバックのフォローアップにも活用
2020年9月には、360°フィードバックの内容について話す1on1を想定し、ふたたびマネージャー陣でケーススタディを実施しました。
360°フィードバックとは、日頃の言動や仕事ぶりについて、上司、同僚、部下などが多面的に評価するもの。全社では半期に1度行っていますが、MT事業部では四半期ごとに実施しています。
360°フィードバックは、みずからを客観視して改善に取り組めるようになるなどのメリットがある反面、指摘された内容がいつのことかわからず悩んだり、思いがけない評価に落ち込んだりする可能性もあります。
従来は、フィードバックするだけで内容について誰かと話し合うことはありませんでしたが、MT事業本部ではマネージャーがフィードバックを基にメンバーをフォローアップしていくことになりました。
ケーススタディでは、「フィードバックを活かしきれていないメンバーとどう話すか」について、マインドマップ等を使って質問項目や進め方を整理しました。
■マインドマップの事例
<質問例>
評価をどう受け止めたか
↓
自己評価、他者評価の高低
↓
評価に納得しているか、していないか
↓
求められる成果を発揮する機会があったか、なかったか
↓
聞くべき質問内容、掘り下げ方
今後も、360°フィードバックの前や、新しいマネージャーが増えたときなどに改めてケーススタディを実施する、またはアウトプットをシェアすることで、各マネージャーの引き出しを増やしていきたいと思っています。
成功体験をシェアし、1on1の可能性を拡大したい
360°フィードバックの1on1を実施した後には、実施回数や内容についてのアセスメント(対象を客観的に評価すること)も導入しました。一般的なアセスメントは、「週に○回の面談を実施してくれているか」と主語が上司であるマネージャーになりますが、「1on1が月に2回以上実施されているか」と事実だけを聞く形式にしている点が特徴です。1on1はメンバーのための時間なので、メンバー自身が主体的に考えて活用してほしい、という考え方が背景にあります。
アセスメントの実施によって、ブラックボックスになりがちな1on1の可視化も少しずつ進んでいます。
1on1改善施策をスタートして、6月からはMT事業本部のメンバーに1on1に関するアンケートを毎月とっていますが、満足度は着実に上昇しているようです。
■メンバーへの1on1に関するアンケート結果
■メンバーからの声
これからは、いかにPDCAを回していけるかが課題になるでしょう。「こうしなさい」というガイドラインよりも、個々のマネージャーやメンバーの成功体験をシェアする仕組みを作って、1on1の可能性をさらに拡大していきたいです。
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※本記事は2020年10月16日に公開しており、記載情報は現在と異なる場合がございます。
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