【ナイルの組織】人事評価制度と給与の考え方を完全公開
転職を検討する際、企業の人事評価制度や給与査定の考え方が気になる方は多いはず。しかし、面接でそういったことを質問しづらいこともあるでしょう。そこでナイルでは、よりオープンな採用をしていくために人事評価や給与の考え方を完全公開することにしました。
以前公開した「給与と評価のリアルな話」では、ざっくりと箇条書きで考え方をまとめましたが、今回は具体的に現場でどう運用されているのかをナイルの取締役・人事本部長である土居健太郎が紹介します。
目次
給与とミッションの関係性
まずは、ナイルが考える給与とミッションの関係性について。
ポイントは、
- 給与の根拠は“ミッション(≒任せる仕事)”
- ミッション(≒任せる仕事)の根拠は“期待値”
- 期待値の根拠は“実績”
ということです。それぞれについて説明しましょう。
給与の根拠はミッションである
大前提として、雇用主である企業は従業員に対して給与を払います。では、何に対して給与を払っているかというと、一人ひとりが担うミッションに対してです。「これだけの仕事を任せられると思っているから、これぐらいのお金を払うね」ということですね。
極端にいうと、月給30万円の人と月給80万円の人がいた場合に、2人とも同じ仕事を同じ期待値で任されているのはおかしな話じゃないですか。80万円もらっている人は、30万円もらっている人よりも難易度の高いミッションを任されて当然です。
難しい仕事を任されているのに給与が低い、給与は高いのにそれほど難度の高くない仕事をしている、といった状態はよろしくありません。支払う給与とミッションは釣り合っていることが重要です。
ミッションの根拠は期待値である
給与の根拠がミッションにあるとお話しましたが、ではミッションの根拠は何かというと、それは信用だったり期待値だったりするわけです。
社会人経験のない新卒の社員に、いきなり社長がやっているような仕事を任せることはしません。また、プログラミング経験がない人に、来年度の業績を左右するような重要なシステムの設計から実装までを任せようとも思わないでしょう。なぜなら、できないことがわかっているからです。
一方で、年収1,000万円を支払っている人に、書類の印刷業務だけの仕事を任せるかというと、それもあり得ません。支払っている給与に見合わない、採算の合わない業務内容だからです。従って、ミッションは期待値も根拠として、釣り合っていなくてはなりません。
期待値の根拠は実績である
続いて、期待値は何から生まれているかを考えてみましょう。
期待値の根拠は、実績です。
それまでもその企業で働いてきた社員なら、「社内でどんな仕事をして、どれだけ結果を残してきたか」。
中途採用者なら、それまでの職歴や面接で聞いた内容からあぶり出した「これまでどんな仕事をしてきたか」。
こういった過去の実績をベースに期待値をセット → 期待値に合わせてミッションをセット → ミッションに合わせて給与をセットして、それが支払われていく。この3つが全部そろっていること、それが人事評価制度と給与における原理原則だと私は思っています。
給与は相対的に公平であるべき
給与や評価を考えるとき、最も避けなければならないのは、活躍している人が『自分が軽く見られている、バカにされている』と感じてしまうような評価をしてしまうこと。真面目にやって結果を出している人、会社にとって本当に重要な人材も、一定期間は「そういうこともあるか」と飲み込んでいたとしてもいずれ愛想をつかせて辞めていきます。
企業における人事評価とは、会社にとって重要な人のエンゲージメントを高め、会社に貢献する意欲のない人が自然と離れていくような制度であるべきだと考えています。
そのためには、前項で紹介した給与とミッションの整合性と、社内での相対的な公平さとのバランスが重要なんです。
月給35万円の人と45万円の人がいたときに、35万円の人のほうが高い目標、重いミッションを任せられていて、自分より10万円多くもらっている人がずっと低いレベルの仕事をしていることがわかったらどうなるか。
査定の場などで何回か意見を伝えて、上司に「給与はそんなに簡単に上がるもんじゃないよ」なんて言われたら、半年後くらいにはバカらしくなって辞めてしまうでしょう。
そのため、給与をベースに考えるならミッションがそろっているかどうか、ミッションを前提に考えるなら給与バランスがそろっているかどうか、ここを見ることがとても大事ですね。
これがちゃんと整っていれば、素晴らしい能力があって、素晴らしい動きをして、素晴らしい成果を上げている人は待遇が良くなり、そうじゃない人はそれなりの待遇になっていく――そういった健全な流れを作ることができます。
評価は判断基準(給与とミッション)と判断材料(結果)に基づく
では、給与とミッションの話に、査定の話をからめて説明します。
給与査定では、その人の半期の評価を出し、職種別なり、ポジション別なりで似たような仕事をしている人の給与と見比べて相対評価をします。ナイルの人事評価において最もエネルギ―を投じて議論しているのは、「給与とミッションのバランスが崩れていないかどうか」ですね。
こうした評価の仕方が100%うまくいっているとはいえないかもしれないし、まだ粗っぽいところもあると思いますが、少なくとも「なんでこの人はこれだけの給与をもらっているのか」と聞かれたら説明できる状態にはあります。
評価に至るまでのプロセス
具体的に評価のプロセスについて説明しましょう。
まず、ミッションは役割と目標に分解され、個人化されます。
<例>デジタルマーケティング事業部の編集者の場合
役割:クライアントの事業貢献につながるコンテンツを制作する
目標:どれだけ納品して、どのくらいの売上を上げるか
この役割と目標に基づいて、人事評価期間にあたる半年間仕事をすると、実績と、実績を上げるまでのプロセスが残ります。評価とは、実績とプロセスの中にある数値やデータと、基準となるミッションを引き比べて、「期待していた以上にやってくれたな」なのか、「期待していたほどじゃなかった」なのかの答え合わせをすること。
判断基準である給与とミッション、判断材料である結果、この2つを照らし合わせて行います。
実態を正しく踏まえて評価することに重きを置く
単純に結果だけを見て評価するのかどうかは、会社ごとの色が出るところ。場合によっては、例えば急な退職者が出て業務量が増えた中でミッションをやり切った、というようなプロセスまで含めて評価することもあるでしょう。
その点でいうと、ナイルでは「画一的な評価基準に則って評価処理をする」のではなく、「実態を正しく踏まえて評価すること」に重きを置いています。活躍している人は手厚く評価したいし、そうでない人をヘンに評価することはしたくない。よって、判断基準に判断材料を重ねて、良い変化があれば評価を上げます。
評価に影響する変化は大きく3つあります。
・業務を改善して成果を出した
やり方を工夫して業務プロセスや業務そのものを改善し、成果を上げた。
・スキル的な成長で成果を出した
もともと持っていたスキルを高めたり、新しいスキルを身につけ、成果を出した。
・人間的な成長で成果を出した
人とのかかわり方や仕事に向かう態度が変わり、姿勢や行動面が改善されて成果が出た。
これらの変化を、事実からしっかり読み取ることが大切。売上目標を大きく上回ったとして、アサインされたプロジェクトが恵まれていたからなのか、たくさん残業したからなのか、仕事のクォリティが上がってこなせる仕事量が増えているのかは、しっかり区別しなくてはなりません。
評価を作業としてこなすのではなくて、一つひとつの事実をどう判断するか、よく考えて評価のプロセスを追っています。ナイルも人数が増えてきてとても大変なのですが、これこそが人事評価の最重要ポイントであると考えています。
評価をどのように給与へ反映するのか
続いては、評価の先にある査定についてです。
前項で紹介した“良い変化”――新たなスキルを習得したり、周囲のお手本になれるような人間性を身につけたりといった純粋な能力の上積み――は、人材としての価値向上につながるもの。よって、ミッションの向上につながる評価材料として昇給査定になります。
つまり、やってもらえることの数が増えたり、幅が広がったりして任せられる仕事の重要度や難易度が上がることによって、給与のベースアップが実現するわけですね。
一方、改善や工夫によって仕事がはかどった、プロジェクト化されて売上が上がった、コストが下がった、などの“期待を超えた成果”は、インセンティブとして賞与で還元します。
ここで最初の話に戻ると、ミッションと給与は連動している必要があります。月給40万円だった人が50万円に引き上がったのに、やっている仕事が変わらないことはあり得ません。これまでの実績からもっとレベルの高いミッションを任せられると期待されているからこそ、目標の高さや役割の難易度が上がり、給与が上がる。
実績、期待値、ミッション、この3つが連動したときに起こるのが昇給です。
評価の基準は「期待通り」を意味する「C評価」
ナイルの人事評価にはS、A、B、C、Dの5つのランクがあって、Sが一番良く、Dが一番良くない。
評価の際には、まずは「C」を基準として、以下3つのどれにあたるかを見極めます。
- C評価=期待通り
- C評価より上
- C評価より下
<C評価>
Cは、良くも悪くも思った通りの活躍だった場合の評価。
そんなに悪い評価でもなければ、特段プラスの材料があるわけでもなく、「この人にこの仕事を任せると、これぐらいやってくれるだろうな」と思って設定した期待値通りの結果なので、ミッションも給与も現状維持です。
経験を積めば積むほど、C評価になる確率は当然高くなります。手馴れてきて昨年も今年もずっと同じような仕事をしていればずっとCです。
<C評価より上(B評価以上)>
Cより上の評価になると、Cとは異なるコミュニケーションが発生します。変化を踏まえて、ミッションや仕事内容、メンバーとの関わり方を変えていくからです。
給料だけ上がって、任される仕事や役割が変わらないことはありません。
逆に言うと、今までと何が変わって、新しくどういう仕事を任せようとしているのか、それはなぜなのか。それがちゃんと説明できなければB以上をつけるのは難しいということですね。ミッションの変化が伴うような人材価値の向上があったなら給与を上げるし、変化がないなら上げない。もちろん給与は据え置きで、ミッションだけ上げるようなこともしません。
<C評価より下(D評価)>
C以下であるDは、期待に及ばなかったという評価です。
厳しい話ですが、このジャッジをできなければ人事評価は破綻すると思っています。評価が悪いからといって正社員を気軽に辞めさせることはしないし、できません。かといって、給与を下げることもしないなら、ある程度まで給与が上がれば、特に努力をしなくても高い給与をもらい続けられる会社になってしまいます。
そうすると、真面目にガツガツやっている人はバカらしくなって辞めていきますよね。そうならないよう、適度な緊張感や危機感を持って仕事にエネルギーを注いでもらうために、厳しい評価もしていくことが重要です。
とはいえ、抽象度の高い仕事であればあるほど、安定したパフォーマンスを発揮し続けることは困難です。一度期待に届かなかったからといって、有無を言わさずすぐに給与を引き下げることはしません。そういう場合には改めて達成するべきミッションを確認し、何を改善してほしいか伝え、猶予期間をもった上で「次回、このミッションをやりきれなければ給与は下がります」と伝えます。
そこで次の査定までにがんばってリカバリーできればそこからは改めて昇給のチャンスが得られますし、そこに到達するのが厳しいとお互いが納得するようなら給与とミッションを調整することになるでしょう。もちろん、給与は維持でミッションだけ低くなることはありません。
活躍している人が真っ当に評価されるしくみに
人事評価制度と給与の考え方について紹介してきましたが、結局は、活躍している社員を真っ当に評価し、モチベーションが維持されやすいしくみを作っている、ということがおわかりいただけたかと思います。
次回は、中途入社の社員や、社内異動した社員の人事評価について解説します!
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※本記事は2021年10月21日に公開しており、記載情報は現在と異なる場合がございます。