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ナイルの組織

【ナイルの組織】非エンジニア経営者は、技術やエンジニア組織にどう向き合うべきか

ナイル株式会社 取締役 土居と申します(twitternote)。

ナイルでは現在30名ほどのエンジニア(デザイナー含めると40名ほど)が自社のさまざまなプロダクト開発に関わっていますが、特にメディア事業やモビリティ事業におけるプロダクトやサービスの今後の拡大を見据えると、しばらくエンジニアの採用ニーズが絶えることはなさそうです。

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私たちに限らず、デジタル領域を主戦場とする企業はほぼ漏れなく「優れたエンジニアを採用する」を重要な課題と位置付けていると思いますし、経営課題の最上位に据えている企業も少なくないでしょう。

一方で、そうした企業であっても、創業者やそのほか経営層が大半、または全員が非エンジニアであるケースは珍しくなく、また(経営層に限らず)非エンジニアのプロダクトマネージャーや事業責任者がエンジニアを直接マネジメントしたり評価に関わることも多々あるはずです。

経営層やマネジメント層が技術に精通していない場合、エンジニア採用、人事評価、組織づくりから開発投資判断まで、技術に関する解像度が低いことに起因する壁やハードルのようなものが高確率で生まれます。

私もご多分に漏れずエンジニアではないものの、過去には複数のプロダクトにおいてプロダクトマネージャーの立場からエンジニアのマネジメントも担当しましたし、全社人事を統括する立場になった今に至ってもなお、上述したような難しさの存在は常に感じています。

非エンジニア経営者が、エンジニア組織を強くするためにできること

私のような非エンジニアの経営層やマネジメント層が、優秀なエンジニアを採用し、活躍してもらうために何ができるのか、ということは最近のテーマとしてよく考えていますが、「プログラムの中身がわからない」というはっきりした制約があることで、考えることは逆にシンプルだとも思っています。

それに加えて、ナイルの目指すカルチャーや組織のあり方などを考慮し、「何ができるか、何をするべきか」などについて、いくつかのポイントでまとめてみました。

1. 前提として、エンジニアはすごい

例えば、10年近く前ですが、見積書の作成にかなりの時間をかけていたことが営業部門の悩みのタネで、「こういうのができたら超助かるんだけど」と立ち話的にエンジニアに相談したら、「そんなのすぐできますよ」と言って30分くらいで作ってくれたことがありました。

今考えれば極めて簡易的な開発だったのでしょうが、実際に営業の提案にかかる工数は激減し、それを開発したエンジニアは神のように崇められていたような記憶があったりなかったりします。
(上記はさすがに極端な例ですが)技術を知らない人であれば想像もつかなかったり、想像できても決して実現できないことを、エンジニアは技術をもって実現するのです。

作業や計算を自動化して人間の負担を大幅に圧縮したり、同じサービスや機能・コンテンツを世界中の人々に際限なく提供したり、人間には処理できない規模のデータを処理したり、といった「今の私たちにとって当たり前にあるデジタルの利便性」は、世界中のエンジニアの努力によって生み出されてきたもの。
規模の大小はあれ、自分たちが実現できない技術を持っていること、その技術を通じて社内外のユーザーに貢献できることに対し、素直にリスペクトするべきだろうと思っています

2. 技術の素人が技術の専門家に細かく口出ししない

1兆ドルコーチ」にこんな一節があります。

“ビルはこの気の毒なプロダクトマネージャーに、今度インテュイットのエンジニアにほしい機能を指図するようなことをしたら、叩き出すぞと言った。君らがエンジニアに伝えるのは、消費者がどういう問題を抱えているのか、どういう人がプロダクトを使っているのかという、背景情報だ。そうすれば彼らは、君らが指図するプロダクトをはるかにしのぐソリューションを生み出してくれる。”

実際にこうまで言い切れる組織は日本では稀だとは思いますが、「◯◯を達成する」のように目的を共有したり、具体的な成果物のイメージについて意見を言い合うことはあっても、「こうやって作ってくれ」「いつまでに、この通りに仕上げてくれ」のように、仕様や細かな要望を一方的に押し付けることを極力避ける。
これは非エンジニアとエンジニアが良い関係を保って仕事をする上で、とても重要なマナーだと考えています。

各人のスキルや経験は考慮されるべきとしても、「どのように作るか」「どれくらいコストをかければ、どれくらいのことが実現できるのか」など、専門的な見解についてはエンジニアにできる限りの裁量を与え、プロダクトマネージャーや事業責任者はそれをサポートする関係性のもと、フラットに議論できるカルチャーが必要です。

3. ゴールは共通、立場は対等、議論はフラットに

さて、ここまでいろいろエンジニアを持ち上げておいてなんですが、当社ではエンジニアだからといって聖域を設けたり、評価・待遇など制度面においても特別扱いしたりすることはありません給与・評価の制度方針は過去記事の通り)。もちろんほかの職種も同様です。

【ナイルの組織】給与と評価のリアルな話

ここは企業文化が色濃く出る部分かもしれませんが、エンジニアだろうと誰であろうと同じゴールを共有し、役割は違えど対等な立場でフラットな議論をしながら、全員で事業成長とゴールの達成にコミットする――これが、私たちが目指しているプロダクト開発の文化の形だからです。

もちろん、エンジニアの給与水準だけを特別に引き上げたり、エンジニアにのみ許された特別制度などをたくさん用意したり、というのも明確な狙いのある組織戦略だとは思いますが、少なくとも、その先に私たちの目指す組織文化が実現できるイメージは湧かない、という話です。

社内で活躍しているエンジニアたちは、若手もベテランも関係なくこういうスタイルに順応してくれていますし、最近入社したエンジニアリングマネージャーには、「ここまでビジネス職とエンジニアがフラットな環境は珍しい」と言われました。

ナイルでは過去に「開発室」「制作室」という組織体があり、それぞれにエンジニアとデザイナーが所属し、各開発プロジェクトに適宜アサインされる体制をとっていた時期がありました。
プロジェクト型か機能別か、のような議論は世の中で数多されているので割愛しますが、当時は全体の組織運営力が今ほど成熟していなかったこともあり、思い返せば縦割・機能型のメリット以上にデメリットが目立ってしまっていたように思います。

具体的には、例えば「エンジニアはエンジニアの理想ややりたいことがあり、それは事業成長と必ずしも直結する話とは限らない」「ビジネス職からのオーダーをエンジニアが実装に落とすようなやりとりが多い」といった、双方の目指すものや利害が一致せず、開発もビジネスも十分なパフォーマンスを発揮できないシーンが少なくありませんでした。

それらの組織体は3年ほど前に解体され、現在は全員がそれぞれのプロジェクトチームに所属し、エンジニア・非エンジニア混成のプロジェクト型組織を形成しています
結果的には、事業の成果や共通のゴールの達成に向けてプロジェクトメンバーが一丸となる形は実現しつつあります。横断の取り組みや技術共有の場、技術発信の取り組みなどについては別の課題として工夫が必要になりますが、現時点ではこの形を良しとして継続する方針です。

4. 経営や事業の意思決定プロセスにエンジニアを加える

理想的なプロダクト開発の文化を作るためには、経営層、事業責任者、プロダクトマネージャー、エンジニアリングマネージャー、ビジネスマネージャーから、いちプロジェクトメンバーに至るまで、さまざまな立ち位置の人が「同じ価値観・同じゴール」をイメージしながらフラットに議論できる環境が必要です。

経営や事業の意思決定にエンジニアが関わらないということは、その最上段でプロダクト開発に関する価値基準がズレる可能性が高い。
例えば、いかに優れたエンジニアリングマネージャーがいたとしても、「指定した通りに動くものを期日までに作るのがエンジニアの仕事だ」という価値基準の組織では、その能力を活かせる余地がありません。

そして、そうした価値基準の是非の判断は、巡り巡って最終的には経営層に委ねられることになります。組織の色を決めるのは、経営層の価値基準(正確に言えば、その価値基準に基づく評価や判断)。局所的な文化、短期的なムードはチームのメンバーやマネージャーも作ることはできますが、全体の組織文化はあくまで事業トップや経営層の影響力によって決定付けられます。

ナイルではしばらく経営チームにエンジニア不在の状況が続いていましたが、2019年にモビリティサービス事業の「おトクにマイカー 定額カルモくん」のプロダクト開発全般(現在はバックエンド、フロントエンド、グロースハック、カスタマー、オペレーションまで)を統括している梅本を執行役員として登用しました。彼は、ナイルの社内制度「NNX」から誕生した初の執行役員です。

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【ナイルの組織】経営会議と「NNX」 – やっててよかった社内制度 その1

最上位の意思決定にエンジニアが関わることで、技術投資やエンジニア採用、インフラ、セキュリティ、外部パートナー選定など実務的な事柄はもちろん、人事評価や人材配置、組織、カルチャー面においても、技術的な観点を常に取り入れられるようになりました

5. 素晴らしい取り組みや成果を外部に発信する

これはシンプルに「この会社で働いてみたいorこの会社に興味がある」と思えるきっかけは自分たちが作っていかないといけない、ということです。

とりわけエンジニア採用については、経営課題として注力している企業が山ほどあります。業績やプロダクトの利用者数、あるいは福利厚生や給与水準のレベルで見てもケタ違いの企業もたくさんある中で、いかにして優秀なエンジニアの目に留まり、記憶の片隅に残してもらえるかを考えなければなりません。

少し前に、社内のエンジニアリングマネージャーたちにアンケートを行った上で、今後のエンジニア採用強化のための意見交換を行いました。「今のナイルを世の中のエンジニアが客観的に見ると、どういう印象を受けるのだろうか」と聞くと、

・エンジニアが欲しそうに見えない
・マーケや事業の熱量は高いけど技術はそうでもなさそう
・エンジニアにキャリアの先がなさそう
・言われたことを実装するのがメインで学びがなさそう
・エンジニアの色が薄いので、社名見た時点で候補から外れそう

といった意見が出てきました。

これは、企業として本来あるべき見せ方を実現できていない自分たちの責任を痛感したとともに、「そんなふうに思ってるなら最近誰も更新してない技術ブログのひとつでも書いたらどうだ」という思いを禁じ得ませんでしたが、それはさておきとにかく技術やエンジニア組織に関わる情報発信は増やしていくべきだと反省した次第です。

一方で、「実際はいい材料があるのに、それが見えていなくて損してると思う点は?」と聞くと、

・エンジニア主導で事業指標を改善している事例が多い
・エンジニアも非エンジニアも一丸となって成果を出している
・開発技術としておもしろいチャレンジも多々やってる
・新しい技術に触れてみる機会がある
・エンジニアのキャリアパスの幅(可能性)が広い
・技術力を評価するための下地も整備されつつある
・働きやすさでいったらかなりのもの

例えばこういった答えが返ってきました。これらは今のナイルを外から見ていたらイメージしづらいポイントだと思いますので、しばらくはこのような情報もさまざまな形で外向けに発信していくことにします。

まとめ

創業者がエンジニアであったり、CTOやVPoE、CIOのようなポジションが経営層に潤沢に揃っている場合はまた違ってくると思いますが、あくまで今回は「非エンジニア経営者が」というテーマで書きました。長いわりにありきたりなことが多かった気がします。

なお、非エンジニアがエンジニアをリスペクトするとか、信頼して裁量を与えるなどといったことについては、漫画「GIANT KILLING」でサックラーことモンテビア山形の佐倉監督も似たようなことを言っています。読んでいない方は全巻購入して読んでください。


「GIANT KILLING」21巻 ©ツジトモ,綱本 将也/講談社

改めて、今後もエンジニアの採用や組織づくりには力を入れていきますし、その上で情報発信の機会ももっと増やしていく予定です。引き続きよろしくお願いいたします。

バックナンバー:
【ナイルの組織】マネージャー向けに1on1の社内ガイドラインを作りましたので公開します
【ナイルの組織】給与と評価のリアルな話
【ナイルの組織】経営会議と「NNX」 – やっててよかった社内制度 その1

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