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ビジネス理解を深めてエンジニアキャリアを拡張。他部署の事業と技術を学んだクロスジョブ制度活用

ナイルには、現在の部署に在籍したまま他部署の業務を兼任する「クロスジョブ」という制度があります。この制度を最初に利用したのがメディアテクノロジー(MT)事業本部の開発責任者・塚本祐一郎。「違う環境で修行を積みたい」と考えていた塚本が、モビリティサービス(MBS)事業部の門を叩き、事業CTO・梅本雄二のもとで3ヵ月間に渡って業務に携わりました。
そこで塚本が得たもの、梅本が伝えたかったこととは…?

<クロスジョブ制度とは>
所属している部署に籍を置いたまま、一定のリソースを確保してほかの部署でミッションを持ち、業務にあたる制度。多様な実務機会を得ることによるメンバーのキャリア形成支援、人材育成などをおもな目的としている。

梅本雄二(うめもと ゆうじ)
執行役員 モビリティサービス事業部 事業CTO 兼 ICT推進室 室長
SIerとしてさまざまなシステム開発の下流から上流まで携わった後、大手共通ポイント運営会社など事業会社の開発責任者を歴任。2018年にナイルに入社し、執行役員としてモビリティサービス事業部CTOとしてプロダクト全体を管掌。また全社的なDXなどICT推進室長を兼務している。

塚本祐一郎(つかもと ゆういちろう)
メディアテクノロジー事業本部 開発責任者
米国の大学院を卒業後、ナイル株式会社に新卒入社。アプリ紹介サービスApplivの開発にエンジニアとして携わる。現在はAppliv開発責任者として開発全般に関わる一方、新卒などの採用業務も行っている。

開発知見を広げるために、期間限定のレンタル移籍

――塚本さんがクロスジョブ制度を利用して、MBS事業部で業務に携わることになったきっかけは?

梅本:塚本くんの上司にあたる取締役の高階(良輔、MT事業本部長)から「ほかのチームでの仕事を経験したことがない開発責任者に、もっと幅広い知見を与えたい」と相談があったんです。
それがきっかけで、塚本くんにはMBS事業部の私のチームで2020年1~3月までの3ヵ月間業務にあたってもらうことになりました。

塚本:私自身、エンジニアの上司がいない状態で働いていて、入社以来アプリ情報メディア「Appliv」の開発を続けていたので、違う環境で修行を積みたいと思っていました。以前から高階とはそういう話をしていたので、挑戦を後押ししてもらったんです。


塚本祐一郎

――その3ヵ月間は、MTでの業務も行っていたんですよね?どんなリソース配分だったんですか。

塚本:クロスジョブ制度では、リソース配分を0.1〜0.3人月(週に4~12時間)、または0.7~1人月(週に28~40時間)、もしくは100%のいずれかで受け入れ部署が指定するルールになっています。理由としては半分ずつの配分だとどっちつかずになってしまうためです。

私の場合は、MBS事業部に8割のリソースをかけていましたね。MT事業本部では、私がいなくてもほかのメンバーで進めていける体制を作っていたので、出席がマストなMTGなどへの参加にとどめて、実務はほとんど行っていませんでした。

梅本:塚本くんには、単なるMBS事業部の開発メンバーではなく、ユニットリーダーとして入ってもらったので、開発業務だけでなく、ユニットに所属する多職種のピープルマネジメントも任せていました。
もちろん、いきなり所属メンバーすべてのマネジメントをするのはさすがに無理があるので、最初は私と塚本くんの2人体制で行い、徐々に塚本くんに任せていった形です。
例を挙げると、前回の記事で登場した森のキャリア相談も塚本くんに引き継ぎました。

<MBS事業部エンジニア、森歩未のインタビュー記事>
SIer経験を活かしてサービスグロースできるエンジニアを目指す。ナイルで歩むキャリアパスの現在地


梅本雄二

――最初からリーダーを任されて、メンバーのマネジメントをするのは難しくなかったですか。

塚本:これまで仕事で関わったことがない人たち、それもデザイナーやマーケターといったエンジニア以外のメンバーをマネジメントするのはとてもたいへんでしたね。

最初のうちはメンバーとランチに行って情報を集めたり、彼らがどんなキャリアを目指しているのかを把握するようにしたりしていました。
各々がどのような志向を持っていて、どういう環境だと仕事に対してモチベーション高くアウトプットができるのかを知った上でマネジメントすることが重要だと感じています。

実は、元々今回のクロスジョブでやりたかったことは、その「多職種のマネジメント」だったんです。

ビジネスへの理解がエンジニアのキャリアを拡張する

――多職種のマネジメントを経験したかったのはなぜですか?

塚本:私自身の志向として、もっとビジネスを作ることができる人になりたくて。キャリアでいえば、PdM(プロダクトマネージャー)や事業部長のような役割ですね。

エンジニアとして開発に関わってはいますが、自分の技術力が上がっていくことよりも、サービスが成長していってユーザーにとって良い価値を提供できることのほうに喜びを感じるんです。
そのためには、エンジニアだけでなく、さまざまな職種のメンバーと関わって、ビジネスを理解していくことが必要だと考えています。

――梅本さんの立場では、塚本さんにどんなことを期待していましたか。

梅本:それは私の座右でもある「目的と手段を逆にしない」「”できない”と言わない」ということに関連していることでもありますね。

事業においては、「Why(なぜ)、What(なにを)、How(どうするか)」の視点を持つことが大事だと考えているのですが、ことエンジニアは開発における”技術”に注目してしまう…つまりHowに視線が向きがちです。
でも、エンジニアが視座を上げて「もっとこういうこともできるんじゃないか」というWhy、Whatの話をして、事業を主体的に進めていくことができれば、プロジェクトのスピード感は上がりますよね。

エンジニア抜きで計画を立てると「エンジニアに工数を確認しないと…」とスピードダウンしてしまうことがよくあります。そうならないためにエンジニアが議論に加われば、すぐに見積もれるし、開発側からの提案もできる。そういう体制をもっと作っていくべきなんです。

もちろん、塚本くんもWhy、Whatの観点は持っているけれど「そもそもその指標が前提でいいんだっけ?」というような、事業づくりにおいてより高い視座を持てるようになってほしいと思っていましたね。

――塚本さんにはどのようなミッションを設定しましたか。

梅本:「CVRを上げて(以上)」です(笑)。ミッション達成のために、何をしていくのか全部考えてもらいました。さっきの話でいえば、Whatの部分をすべて任せたということですね。

――わかりやすいですね(笑)。

塚本:シンプルでいいなと思いました(笑)。CVR改善などはApplivでもやってきたのですが、短期間でプロダクトを理解し、異なった環境で結果を出さなければいけないという意味では多少不安もありました。
ただ、僕自身がめっちゃがんばったというよりは、自分が壁打ち役になって、メンバーからのアイディアをブラッシュアップするなど、チームのメンバー主体で施策の成果を上げられたのが良かったと思います。

3ヵ月と短い期間でしたが、ミッション達成のために何をするのか、上流から考える経験ができました。MT事業本部に戻ってからは、プロダクトを長期的に考え、エンジニアの領域に留まらずビジネス全般に対して高い視点で議論ができるようになったと思いますね。

新しい事業・技術に触れることは、選択肢を増やすということ

――マネジメント以外に、エンジニアとしての収穫は何かありましたか?

塚本:新しい技術にふれられたのは貴重でしたね。

梅本:なるべく新しい技術やツールにふれてもらう機会を作ろうとは思っていました。そこから何か気付きがあればいいな、というくらいの思いでしたが。

塚本:事業部が変わると、ビジネスモデルやアーキテクチャなどが大きく異なるんです。特にMBSは新しい技術をどんどん取り入れているので、初めてふれるものもありました。
技術的なところでいえば、サーバレスやkintoneなど、MT事業本部での開発で使っていなかった技術を扱いましたね。

梅本:MBS事業部は新規事業を展開しているので、とにかくスピードが重要なんですよね。MT事業本部は、ある程度基盤がしっかりしているのと、サービスの利用者が多いため、より安定した開発体制や進め方が求められます。
一方でMBS事業部は、サーバレスやSPAなど、プログラミングにこだわらずコストや多少のリスクがあっても、スピードを出すために使えるものは使っていこうと試行し続けている。その違いはありますね。

※開発におけるMT事業本部とMBS事業部の考え方の違いは、梅本が次の記事で紹介しています。
経営者の隣でビジネス力を鍛える―「事業家集団」ナイルのエンジニアが目指すこと

――ビジネスモデルやフェーズによって開発の考え方に違いがあるのは、まるで別の会社のようでおもしろいですよね。

塚本:あと、梅本さんが業務フロー図をしっかりと書いていたのも印象的でしたね。これまでのWeb開発の中では、私が構造をある程度理解していたこともあって、最初にフロー図をしっかり作って流れを整えることはあまりやっていなかったので。
業務フロー図を書いていく作業は、梅本さんがSIerのころはよくやっていたんですか?

梅本:実はSIerでもそこまでしっかり書かない人もいるんですが、私が業務フロー図を書く理由はしっかりあって。

サービス開発には“攻め”と“守り”それぞれが大事です。MBS事業部が運営している「おトクにマイカー 定額カルモくん」でいえば、“攻め”とは、多少のリスクを負っても、開発速度を上げるための仕組みやツールを導入すること。
そして“守り”とは、個人情報のような漏洩などのミスが決して許されないデータをどう扱うかです。ミスが許されないからこそ、データをどういったフローでどこにどのように保持するかを明確にする必要があります。そのために業務フロー図を作っていたんです。

<業務フロー図のイメージ>

塚本:実際の開発でも業務フロー図によって認識がそろう場面があって、きちんと活かされていましたよね。フロー図を使うようにしたのは、梅本さんを見て身についたことです。

――クロスジョブを終えて、元のチームに持ち帰った技術やツールはありますか?

塚本:MT事業本部でも、一部のプロダクトでサーバレスを実装したり、応用できそうなツールを導入したりしています。
それまで使っていた技術に慣れてしまうと、新しい技術を取り入れることに対しては腰が重くなりがちですけど、MBS事業部で新しい技術やツールにふれたことで、その心のハードルは下がった気がします。やはり、エンジニアにとって幅広い技術にふれることは、開発における選択肢を広げる意味でとても重要だと思いますね。

梅本:クロスジョブ制度を通して、技術的な成長や選択肢が広がるきっかけを生み出せていると思います。同じように、社内のほかの事業がどのようなビジネスモデルで成り立っていて、どういった課題があるかを知ることも、自分が所属している事業での選択肢を広げることになるはず。

新しい技術や異なる事業にふれることが、転職という大きな決断ではなく社内で経験できるのはとても有意義なことだと思いますね。