ナイルのかだん 「生のナイル」を発信するオウンドメディア

サマーインターンの裏側で

後輩の久保が喋っていた。
普段の彼は絶対着てこないような襟付きのシャツを着て、堂々と会を進行していた。

もうひとつのサマーインターン

2018年7月初旬。
今年も、ナイルのサマーインターン「Million Dollar Bootcamp(以下MDB)」が開催された。MDBは、「1億円を原資に100億円の価値を持つ新規事業を考える」という新規事業立案型のサマーインターンだ。今年は、倍率約23倍の選考を進んだ14人の学生が五反田に集まり、3日間という短い時間の中で頭をフル回転させ、メンターと一緒に新規事業を考え抜いた。
参加してくれた学生たちは、きっとそれぞれ何か得るものがあったと信じている。
当日の様子はこちらの記事にて

その裏側で、別の何かを手に入れた男たちがいた。
MDBの運営メンバー、ナイルの19卒内定者インターンたちだ。

それを選ぶのは久保だ

「今年のMDBの運営は久保に任せるよ」
今年3月のある日、社長室プロジェクトリーダーの渡邉さんは僕と久保を会社のフリースペースに呼び集めてそう告げた。言い切った、と書いた方が正しい。
19卒内定者インターンの久保を、20卒対象のサマーインターンの運営責任者に任命する。昨年のMDB運営を手伝っていた18卒の僕は、彼のサポートをしてほしい。
それが渡邉さんの話の趣旨だった。

そう聞いたとき、正直、僕は渡邉さんのその判断を疑った。
「自社のサマーインターンを経験していない久保に運営責任を任せて大丈夫なのか?」
「彼はまだ学生だし、準備の時間も十分に取れないんじゃないだろうか」
「何より、久保本人のやる気はどうなんだろう?聞く前に決めていいのか?」

しかし、そんな僕の心配を知ってか知らずか、久保はいつもどおりの飄々とした感じで「大西さん、僕やりますよ。楽しみましょう」みたいなことを言っていたので、僕も余計なことを考えるのは辞めて彼に協力することにした。
「そうだな!頑張ろう!」


事前ミーティングの様子

実は、この話のあとで渡邉さんに正直に聞いてみた。
「久保に運営を任せた理由ってなんですか(ほんとは渡邉さんが今パツっててMDBの準備する時間ないだけ、とかじゃないんですか)?」

「彼に成長の機会を与えたいからだよ。今年のMDBを俺や大西くんが主導していくのは簡単だ。勝手も知ってるし、十分いいものになるだろう。しかし、今、うちには19卒の『経営幹部候補』としてナイルに入ってきた久保もいるんだから、彼にも機会を与えたいんだ。彼が途中で迷うならいくらでも手を貸す。諦めるなら後の運営は俺たちでやる。でも、それを選ぶのは久保だ。それに、彼を信じているから任せるんだ」

この時ほど、自分の浅はかさを呪ったことはないかもしれない。

とにかく、その日から準備が始まった。
MDBの参加者を集めるためのLP制作を依頼したり、Facebook広告を運用したり、選考フローを考えたり、事業部のメンバーに選考官の依頼をしたり、MDB当日のタイムスケジュールを考えたり、経営陣に学生向けのプレゼンの準備を依頼したり。やらなきゃいけないことは山積みだった。

久保は最初こそ「これってどうしたらいいですか」と戸惑い気味だったものの、渡邉さんから何度も「久保自身がどうしたいのか考えて、それを実現するにはどうしたらいいのか聞いてよ」とフィードバックされるうちに、「3人で今年のMDBのキャッチコピーを考えてきましょう」「大西さん、これお願いします」「渡邉さん、あれまだですか?」と運営責任者として主体性を発揮するようになった。

そうして、3ヶ月間、時間がない中でなんとか準備をし、当日を迎えた。

究極のホスピタリティ

当日の運営メンバーは、18卒2人と、19卒の久保・青木・小熊の3人だった。
その頃、青木と小熊は内定者インターンを開始してまだ日が浅く、業務を覚える方が優先だったため企画・準備に関わる時間はあまり取れなかったけど、当日は参加してくれることになっていた。
※僕と渡邉さんはそれぞれメンターとして参加し、ビジネスプランを考える学生につきっきりだったので、当日は裏方の運営メンバーと直接連携することはなかった。

青木は気のいい好青年で、やたらと健康食品や雑学に詳しい謎の男だ。小熊はストイックなしっかりもので、飲み会では顔色ひとつ変えずにワインを次々と飲み干す無類の酒好きだ。


19卒内定者インターン・小熊

「大西さん、これ結構ヤバイですよ。当日の運営の動きが整理しきれてないんです」
初日のオリエンテーションが終わり、昼食のために会社の外に出る折、小熊が神妙な面持ちで話しかけてきた。これまで3年以上の月日を某大学受験予備校のアルバイトに捧げ、イベント運営も経験してきた小熊は当日の細かい点での準備不足に気づいていた。恐らく青木もだろう。

「僕も渡邉さんも久保の一挙手一投足を見切ることはできなかったし、久保はイベント運営をしたことがないから、不足してる部分は多いと思う。同じ19卒として、イベント運営の経験者として、彼をサポートしてあげてほしいんだ。小熊と青木に任せる」

渡邉さんだったらきっとこう言っただろう、と僕も彼らに任せることにした。久保が本当にヤバいときは僕たちがカバーすればいい。その前に、久保には運営の仲間として青木と小熊がいる。彼らも同じ19卒だ。だから、まずは任せることにした。

……

「失礼します、何か欲しいものはありますか!?」
1日目の夜、学生たちにも疲れが見えてきたタイミングで青木と小熊が会議室にやってきた。即座に「アイスが食べたい!」「甘いものがほしいです」とリクエストする学生たち。2人は居酒屋のカリスマ店員のように「かしこまりました!」と答えると、数十分後にリクエストどおりの品物を持って現れた。
喜び色めき立つ学生たち。

元々の予定にはなかった差し入れが気になったので、気分転換がてら運営チームの元を訪れると、青木が教えてくれた。

「僕たち運営のミッションは『学生に究極のホスピタリティを提供すること』だ、って決まったんですよ」
つまり、久保・青木・小熊の3人は準備不足をカバーし合いながら、さらに「参加学生の満足度を上げるにはどうすればいいのか?」を自分たちで考えて実行したということだ。しかも学生からの反応も上々。当事者意識そのものを見た気がした。彼らに任せて良かった。そして、彼ら3人なら、きっと最後までやりきれる。
このまま順調にことが運べば…。


当日、準備を行う運営チーム

そう確信して迎えた2日目の夜、想定していなかった事態発生した。
MDB運営責任者の久保が、最終日に実家に帰らなくてはいけなくなった。

俺がやるよ

覚悟はしていた。
これまでの自分の人生において、「ここ一番」というときに限ってアクシデントが発生したことは何度もあったからだ。高校最後の文化祭のライブ中にスピーカーが壊れたときよりはマシだ。

「明日のことは俺たちに任せて、余裕持って帰りな」
とりあえず久保に伝える。最終日に現場にいられないことは本人が一番悔しいし焦っているだろうけど、これくらいの言葉しかかけられなかった。

今回問題になったのは、最終日のプレゼン発表会の司会が久保であったことだった。細かい進行については久保しか把握していない。運営メンバーから代役を立てると、運営のオペレーションも組み直す必要がある。とにかく俺が代わりに司会をやるべきか、と思ったときだった。

「小熊くん、お願いしていい?」
久保が小熊を司会代行に指名した。

「いや、今から小熊くんが進行把握すると時間かかるよ。それより、俺はずっと一緒に打ち合わせしてたから大体把握できてる。俺がやるよ」
青木が名乗り出る。
「そうなると、今度は俺はこっちの役割をやって……」
小熊も自然と自分の役割をスライドする。

運営メンバー全員が、久保と青木がチェンジすることに対応して動き始め、オペレーションを組み直し始めた。そして打ち合わせを進めた結果、かなり厳しいがなんとかなりそうということがわかった。

運営メンバーの当事者意識が、イレギュラーを乗り越えた瞬間だった。


司会を名乗り出た青木

あとがき:全てのコトは、自分ゴト。

結局、MDBの最終日はさらにゴタゴタして、実は完璧といえる出来ではなかった。
が、あの日、僕たちは最後まで学生に向き合い続けることができたと思う。それはMDBに関わった全員のおかげだ。

久保は実家に帰る道中、「どうなりましたか、問題ないですか」とメッセージをくれた。
青木とMDBの話をすると、今でも「次はもっと上手くできる」と悔しさをにじませる。
小熊は最終日の打ち上げ後、学生と4次会まで飲みに行って、帰ってこなかった。

全てが終わった今、思うことがある。
ナイルのバリューに、「全てのコトは、自分ゴト。」というものがある。社内で起きる全てのことを自分事と捉え共感することを良しとする行動規範だ。

あの日の運営メンバーには、本当の意味で当事者意識が全身にみなぎっていた。まさに「全てのコトは、自分ゴト。」だったと思う。

僕は、こんな19卒の後輩がいるナイルのこれからはもっと良くなる、良くできると思っている。渡邉さんが久保に全てを任せたときのように、僕も20卒、21卒へとその意思を繋いでいきたい。

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